チラシの裏。
4月の終わりまでに「研究テーマ」を教務課に提出しなければならない。正・副両指導教官のハンコをもらって、である。期限まではあと10日。時間があるようで、無いというのが現状である。しかし一向に決まらない。
卒業論文を発展したものにしようと考えてはいるんだけど、どうも明確なのが無い。だいたい民俗学の中でも結構マイナーな場所をつついたからなー。最近になってぼちぼち論考だとか出てきてはいるんだけれど、それ以前のものはあんまり無い。
私が扱っているのは「フォークロリズム」という概念。これは語れば長くなるので、短く言うと「民俗の再利用」である。これまで民俗学で扱われていた知識が、現場に還流するという事態があちこちで起きているというのだ。「ふるさと観光」や「グリーン・ツーリズム」なんてのがそれにあたる。こうした観光化された民俗を「まがい物」だとして排除するのではなくて、「なぜそうした演出が行われるのか」を問う枠組みともいえる。
何でこれに着目したかっていうと、自分の中に引っかかってた民俗学に対する疑問にびしっと答えを示してくれそうだったから。疑問てのは、「民俗とか伝統って簡単に作り出せるよね。これを民俗学はどう捉えているんだろうか。」というもの。まぁそんなところからこの概念に行き着いたわけです。もっとも、先輩が「こんなのあるよ~」というのを教えてくれなかったら一生気づかなかっただろうな。
んで、私がフォークロリズムに関して感じている疑問はいくつかある。1:なぜ言及した論文が少ないのか、2:今日的な意義はあるのか、3:なぜ人はフォークロリズムを生み出してまで伝統や懐かしさを求めるのだろうか、という具合。
一説によれば1990年代に”輸入”という形で日本に入ってきたみたいだけど(もともとドイツ民俗学で誕生した概念)、そのまま日本の枠組みで議論しても当てはまるのか、という点があったのかもしれない。海外ですでに議論され尽くした、というのもあるのかもしれない。3は特にわからない。セラピーの機能なんてのが指摘されてるみたいだけど、よく分からなくなってきた。また文献を読み直すしかないなこりゃ。
合格してから先生から言われた一言が頭から離れない。「フォークロリズム研究は面白いと思うよ、でも就職先は少ないから、そこを覚悟して。」一体なんで少ないんだろうか。言及した論文が少ないのとあわせてそれも気になる。マイナーですかそうですか。
それをつつくというのも面白いだろうけど、次につなぐんだったらもうちょい面白い方がいいよなぁ。
うーん、悩む。
以上チラシの裏。
参考
岩本通弥編 2003 『現代民俗誌の地平 3 記憶』 朝倉書店
岩本通弥・新谷尚紀編 2006 『都市の暮らしの民俗学 1 都市とふるさと』 吉川弘文館
バウジンガー、ヘルマン・河野眞訳 2005 『科学技術世界のなかの民俗文化』 文楫堂