こないだ大阪に行ったときに、超がつくほど久しぶりに「みんぱく」こと国立民族学博物館に行って、開催中の企画展を見てきた。
↑このときの初日の話。
今回の分(10月行った時)とは別です。
「みんぱく」?
みんぱくは大阪の万博跡地に立てられた博物館。なんだけど、実はほかの国立館とは違っていて、ここは早い話「大学とか研究機関」と同じ扱い(大学共同利用機関法人人間文化研究機構が所管。同じような館としては佐倉の国立歴史民俗博物館がある。ほかの東京国立博物館とかは独立行政法人国立文化財機構が、東京国立近代美術館などは独立行政法人国立美術館がそれぞれ所管している…というかなりこの辺はぐねぐねでよくわかんないことになってるけど、みんぱくは民族学・文化人類学を中心にした展示をしている。
常設展示をすべて見終えるのに3時間近くかかる恐ろしい博物館でもある。じっくり見たら多分1日は費やせる博物館だと思う。最近ちょこちょこ展示をリニューアルしていて、タッチパネル型の解説とかも導入しているようだ。
民族学・文化人類学を中心にしているだけあって、世界各地のモノが収集・展示されている。アフリカの路上の看板とかまである。東南アジアのコーナーは田植え道具が日本のそれとよく似ていることがわかるけど、細かく見ていったらやっぱりちがう。
そんなことに気付きながら歩くだけでも楽しいけどあっという間に時間が過ぎていってしまうから注意。
見てきた展覧会:「韓日食博―わかちあい・おもてなしのかたち」
今回見てきた展覧会はこれ。日韓の食文化の対比からその特徴を見いだそうとするもので、実際に使われている道具だけでなく、町の風景であるとか、どのようなものを食べているのかなど、視覚に訴えかけるような展示が中心。
壺とか甕とか
壷とか甕とか。実際に韓国で用いられているもので、発酵食品用などだそうです。
映像系の展示
これは映像コンテンツ展示で、どっちだったかな、とにかく日本と韓国の芸術学科を持つ大学が作ったものでした。映像・音声などが流れっぱなしで少々うるさい感じも。
食事の時の音をどんな擬音で表すのかとか、どんなものを食べてたかも映像で。
市場の様子
市場の様子、市場で働いている人などがインタビュー等で取り上げられていました。前韓国行ったときはそういうところに行かなかったので非常に興味深かったです。
おなじところには日本の各地の市場で撮影された映像なども流されていました。
ダンボール類
1階展示室の一個所にはこんな具合で実際に用いられているダンボールが積み上げられていました。日本・韓国両方のダンボール。どちらもぱっと見ただけで何が入ってるのかがわかるようなイラストが着いているのが面白い。
あ、大きさの規格とかそういうのちゃんと聞いてくるんだったな。
カップラーメンのふた&ドリンク剤コレクション
これも展示室の奥に設けられていた展示なんだけど、韓国風のカップラーメンとか、韓国で売られているドリンク剤の容器とかを集めて展示していました。カップ麺の蓋は担当者が一人で全部食べて集めたらしくて、「一人で食べました」というキャプションまでついていました。体張ってるなぁ。
それにしてもこんな数のカップ麺が出てるのか。
チラシと年中行事
こちらは日本のスーパーのチラシ類。スーパーのチラシには年中行事の話題が細かく書いてあるものも多くて、じっくり見ていくと非常に面白い。もっとも、そういうところで取り上げられる年中行事はいったいどう位置づけられるのか、なんていう研究もあるし、研究の観点から見ていても興味深い内容でした。
こういったスーパーのちらし(おもに新聞の折り込みチラシ)30年分くらい集めている人知ってるけど、いつかデータベース化してみたいよなぁ。分析する時間があればの話だけど…。
家電(台所用)一式
これは韓国の一般家庭の台所にある道具たち。
民博は以前、実際に韓国のとある一般家庭の部屋をそっくりそのまま再現する展示なんていうのもやっていて、今回の展示もそのときの一部らしい。あとで映像で見たけど、台所のスプーン1つまですべて記録化したうえで日本に持ってきて再現展示していたみたい。「2000年代のライフスタイルの記録」として価値あるものだとは思うけど、実際にサンプルになった方の家庭はいろいろ大変だったろうなと思う。
データベースと端末
みんぱくのすごいところは、収蔵資料をデータベース化してある所だと思う。設立の時点からすでにコンピューターを利用した収蔵資料管理システムの原型のようなものができていて、ちゃんとした基準のもとで番号が打たれて管理されている。
ここらへんの経緯に関しては、初代館長の梅棹忠夫の著作に詳しく書かれています。書かれているというか対談で議論されてるといったほうが正しいか。
博物館は情報を集積するところ、だから「博情館」とするべきや、みたいな、冗談なのか本気なのかわからないところもでてきますが、言ってることはたしかにそうかと。
情報を集積してあるのであれば、あとは取り出して加工しやすいようにしておけばいい、というのが根底にあるようです。これは『情報の文明学』とかでも似たような議論をしていたようにおもいます。
で、この端末の話に戻るけど、レスポンスがすごくいい。見たい資料を選んで表示させるまでにもたつきもなくスムーズに表示される。どんな仕組みで動いているのかすごく気になります。たぶん館内の専用線でサーバーからデータを配信してるんだろうけど、どうなってんだろ。これとは別に映像コンテンツもあり、これもレスポンスが非常に高速でほぼ待ち時間無しで閲覧できる。サーバー自体が別個だとは思うけど、どうなっているのやら。
データベース周りが気になったのは、以前仕事で館内データベース開発に携わったことがあるから。あんまり詳しくは書けないけど、その時サーバーのスペックやら回線の速度やら、中身だけでなくハードも重要だということを知った次第です。当たり前なんだけど。
展示と図録と
今回あれこれ書きたいことが多すぎて話題があっちこっちなってるけど、民博の企画展はここ数年かなり変わってきてるような印象を受ける。たとえば今回の展示に関しても、ボード類をそんなに立てずにピケ足場のようなものでベースを組んで、その間に白い布を壁の代わりに張り巡らせる、ていう具合に作っている。だから注意書きに「寄りかからないでください」なんてのが出ている。
渋沢展のときはボードが使われていたけど、順路の構成とか資料の見せ方が工夫してあった。こう、覗き見るような感じでオシラサマとか展示してあったように記憶している。
見せ方といえば図録だ。展覧会をまとめたものが図録なんだけど、ここの図録はちょっとしたムックのようなものに変わってきているように思う。それまでは論文が載っていたり、真面目な資料写真ばかりが中心だったけれど、ここ数年で変わってきたんじゃないだろうか。たとえば、資料写真は通常「資料がどのような形状であるかわかる」ことが前提なんだけど、ここはあえて集合体でしかも1点にだけピントを合わせてあってあとはボケた描写にする、とか、ちょっとした写真の本に出てくるような写真を使い始めている(前からそうだったのかもしれないけど)。今回の展覧会のは見開きに焼肉の写真を持ってくるとか構成も面白くて、いいデザイナーか企画者が活躍してるんだろうなと思う。
屋根裏部屋の博物館 ATTIC MUSEUM: 渋沢敬三没後50年
- 作者: 国立民族学博物館
- 出版社/メーカー: 淡交社
- 発売日: 2013/11/05
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これは渋沢展の図録。この数年で一番びっくりしたもの。
ビデオテークを楽しもう
企画展→常設展示、の流れの後でビデオテーク。まさかここで1時間以上いることになるとは思わなかった。
ビデオテークは先の梅棹忠夫の著作内にも出てくるけど、世界各地の民族・文化などの記録映像からちょっとした番組までを自由に自分で選んでみることができるシステム。これも複数人が一度にアクセスしてももたつかず、スムーズに再生できるもよう。たぶんストリーミング形式なんだろうけど、最近の高画質映像もきれいに再生できていた。ハイビジョン画質かどうかはわからなかった…。
ちょうど企画展にあわせて日韓の特集が組まれていたので、それをちまちま見ていたらあっという間に1時間以上経ってしまっていたというわけ。番組としては、
- 屋台でトッポギを売るおばちゃんに密着したドキュメント
- 路上市場の1日の様子
- 「2000年台のライフスタイル展」にともなうドキュメント
- 車へのお祈り
などなど。正確なタイトルを忘れてしまったので大まかな内容になってしまったけどこんな感じ。ドキュメンタリーものは面白いね、トッポギのおばちゃんの番組はNHKの「72時間」を見てるような感じ。ただ取材者の質問が面白くなさすぎてもう少し聞きようがあるだろ、ほかの質問があるだろ、みたいなことは思ってしまったけど。
このビデオテーク、外部ネットワークからでも見られるようにしてほしいなぁ。著作権とか肖像権とかそういうところで難しいだろうけど、一日中見ていたいもん。HuluなりNetflixなりどこかと提携してやってくれないだろうか。無理かな。
1日遊べる博物館
そんなわけで今回は半日程度で撤収。でもその気になれば丸一日いても飽きない博物館。私が好きなのはアフリカ・東南アジアのコーナーかな。東南アジアは米作用の農具とかを展示してあるんだけど、日本のそれによく似ている。それを実際に見るだけでも面白い。楽器のコーナーとか、実際に鳴らすこともできるし。
ビデオテークは全番組視聴するのにどのくらい時間かかるだろうか。これはいつかやってみたいと考えてる。果たして開館時間内で終わるのかどうか。
モノレールの駅から近いのでアクセスも便利。公園内を少し歩かなければならないのが辛いところだけど、休憩所とか各所にあるのでぶらぶら散歩しながら向かうのがおすすめ。
やりそびれたのは、レストランで提供されている企画展関連メニューを食べそこねたこと。スンドゥブ食べたかった…けど1食に1300円ちょっと出すのはさすがにつらい。つらいのでその後大阪駅の立ち食いでそば食ってホテルへ。くそう、熱くて辛くてうまかっただろうなぁ…。
なんていうか、うまくまとまってないけど、楽しい博物館なので行って損はないと思うのでぜひ。